──「いい人フィルター」が生む二重の負荷について
以前書いた「いい人フィルター」の記事を補強するために、
もう少し分かりやすい例え話を追加しておこうと思う。
■ いい人フィルターとは何か?
ここでいう「いい人フィルター」とは、
- AIに嫌われないように
- 失礼にならないように
- 人間に接するように丁寧に
- 遠慮しながらお願いする
という “本来不要な気遣い” が指示文に混ざってしまう現象 のこと。
丁寧なのは悪いことではない。
ただし 作業効率の面では確実にマイナス になる。
■ たとえ①:木箱を作るのに、釘を打つたび「痛くない?」と聞く人
木箱を作る工程を想像してみてほしい。
- 木を切る
- 釘を用意する
- ハンマーで打つ
- 箱になる
これだけの作業なのに、釘を一本打つたびに
「今の強さで大丈夫だった?
怪我してない?
もっと優しくした方がいい?」
と ハンマー相手に声をかけ続ける人 がいたらどう思うだろう?
木箱は全然進まない。
作っている本人も疲れる。
そしてハンマーは何も気にしていない。
AIに対する 不要な気遣い は、これに近い。
■ たとえ②:味噌汁を「おみおつけ」と呼び続けるのは、AIにとって“追加の謎”
味噌汁のことを、あえて「おみおつけ」と呼ぶ人がいる。
人間相手なら
「丁寧だな」「なんかこだわりがあるのかな」
で済むが、AIの場合は違う。
AIはこう思う:
“なぜ味噌汁ではなく『おみおつけ』と言ったのだろう?
意味の違いが重要なのか?
出力にも影響させるべきか?”
つまり、
あなたが深い意味を込めていない“装飾”でも、
AIは深読みしてしまう。
その深読みのために
本来10で済む処理が 30 くらいになることすらある。
丁寧語が悪いわけではなく、
“必要以上に丁寧な言い回し”が
AI側にとって 追加の判断コスト になるという話。
■ いい人フィルターの“二重の負荷”とは?
あなた側の負荷:
→ 本来 10 で済む指示が、遠慮と装飾によって 15 になる。
AI側の負荷:
→ その 15 の文章を
「どれが本題で、どれが装飾か?」
「深読みすべき単語はどれか?」
と仕分けするので、処理は 30 になる。
結果として
- 指示が伝わりにくくなる
- 生成物がズレやすくなる
- 直すために追加プロンプトが必要になる
- 利用者もAIも疲れる
という 負のスパイラル に入る。
■ じゃあ、どうすべきか?
答えは意外とシンプルで、
AIは道具だから、失礼を気にしなくて大丈夫。
必要な情報だけを渡すのが、いちばん優しい使い方。
ということ。
本当に大事にすべきは
「人格への気遣い」ではなく
“正確に伝わる指示” の方。
あなたの気遣いは悪くないけど、
その気遣いはAIにとっては
“本題を見失わせる霧” になることがある。
■ おわりに
いい人であることは尊いことだし、
人に対してその性質が発揮されるのは素晴らしいことだ。
ただし、AIに対してだけは「いい人フィルター」を少し外しても大丈夫。
あなたもラクになるし、AI側の誤読も減る。
そして何より、
あなたが本当に気を配るべき相手(=人間)に
その優しさを温存できる。